先輩を訪ねて
Persons
現在はどのようなことをされていますでしょうか
20人の会社で、エンターテイメント機器の開発をしています。コンピュータを使った様々な演出が作り出すオモシロサやオドロキが、「苦しみを楽しみに変えるチカラになる」ことを実践中です。
現在の活動(研究も含め)はどのようなきっかけで始められたのでしょうか
大学4年の時に初めてコンピュータに触れたことがキッカケです。私にとってはコンピュータ・プログラミングは、結果がすぐに得られる、何度も何度も作り直せる、「衝撃的な図画工作」でした。
大阪大学理学研究科時代に、心がけていたこと・大切にしていたことは何ですか
ソースコードを綺麗に書くことでしょうか。誰が見るというわけでもないのですが、「私のソースを見てよ!Visibility(可読性)が高くて、かっこいいでしょ!?」という感覚でした。今、思い返してみるに、自分にとって、絵を書くとか、音楽を奏でるとかと同じように、表現手段のひとつだったのかもしれません。
大阪大学理学研究科時代に印象的なエピソードがあればお教えください
常深先生に強烈に叱咤されたことです。夜も更けた頃、研究室でプログラミングの合間に、友人らとゲームの打ち込みをやってたのがバレました。「ソースコードを書くのならよいが、バイナリーを打ち込むのは全くタメにならん!無駄な時間を使うな!」と。その後、社会人になってからも、電子ゲームは全くしませんでした。かなりのめり込むタイプの私にとっては、あの事件のおかげで、人生の多大な時間を無駄に過ごさずに済みました。ただし、10年後に、某巨大ゲーム屋さん向けの半導体の開発主任になるまでは…です。ゲームを実際にやらないと仕様設計ができないので、仕様書を作成するために、会社の実験室で電子ゲームをするハメになりました。なかなか皮肉な運命だったと言わざるをえません。
これからの大阪大学理学研究科について、提言等ありましたらお教えください
私にとって、理学は「事象を一般化する力を養うこと」です。これを鍛えれば、学問の場を離れても非常に有用な、生きるチカラになります。この感覚を学生に身に着けさせることもまた、大阪大学理学研究科が社会に貢献する一方策ではないかと考えます。
今後やってみたいことはどのようなことでしょうか
オモシロサやオドロキが、「苦しみを楽しみに変えるチカラになる」ということを、さらに実践していきたいと思っています。例えば、あるプロジェクトでは、弱視訓練用のゲームソフトを開発しました。訓練士がリハビリ患者に、「ストップ!今日のリハビリはもうこれでおしまい。あとは明日ね。」と言わざるをえない。それほど訓練がオモシロイ。そんな訓練ソフトになると夢想しています。
理学友倶楽部の部員にメッセージをいただけますでしょうか
人は、暗黙の前提条件の中で論理を構築する癖を持っています。多くの場合、その前提条件の存在に気が付きません。しかし、その存在に気が付いたときには、新しい課題を発見できる可能性があります。「課題を解決するチカラ」は非常に重要ですが、「課題を作るチカラ」はもっと重要です。
「昨日正しかったことは、今日は間違っているかもしれない」と思って、日々を暮らしていくこと。それこそが、暗黙の前提条件に気づく近道かと思います。