先輩を訪ねて

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現在はどのようなことをされていますでしょうか

物質・材料研究機構という、つくばにある材料の研究所で、電池材料の研究、特に固体電解質(イオンが伝導するセラミック)を使った固体電池の研究を行っています。

現在の活動(研究も含め)はどのようなきっかけで始められたのでしょうか

松下電器(現パナソニック)に入社した時に配属されたグループの研究テーマが、固体電解質でした。その研究をずっと続けることになるとは、まったく思っていませんでしたが、25年以上続けています。
入社した当初はバブル最盛期で、研究所は何をやっていてもかまわないという雰囲気だったのですが、バブルがはじけると息の長い研究に対する風当たりも強くなり、「1999年7の月」にポスドクみたいな形で今の研究所に転がり込みました。

大阪大学理学研究科時代に、心がけていたこと・大切にしていたことは何ですか

部活に励んだり、バイトをしたり、ごくフツーの学生生活を送っていました。同級生の中には、入学早々にファインマン物理学を勉強し始めるような男もいましたから、単に高校の授業で物理が一番面白かったというだけの理由で学科を選んだ私は、フツーの会社員になるんだろうなと思っていましたし、実際に卒業後はフツーの会社員になりました。

大阪大学理学研究科・理学部時代に印象的なエピソードがあればお教えください

研究室では、毎日のように機械工作や電気工作をしていました。
先生方や先輩方が設計してくださったものを組み立てるだけでしたが。卒業後、研究室にお邪魔したときに、「会社で、はんだ付けがうまいとほめられました。」と報告して、先生に「教えた甲斐があった。」と喜んでいただけたことはよい思い出です。

これからの大阪大学理学研究科・理学部について、提言等ありましたらお教えください

研究所に来る学生さんやポスドクを見ていると、いい仕事をするのは決まって研究を楽しんでいる方です。
教育のことはあまりわかっておりませんが、学生さんには是非研究の楽しさを教えていただきたいと思います。

今後やってみたいことはどのようなことでしょうか

5年間、拠点長を務め、すっかり中間管理職化しておりましたが、やっとそれも終わりましたので、とりあえずは実験室に戻りたいですね。自分の手で材料をいじらずに研究を進めることができるほど優秀でもないですし、何より楽しくないです。

理学友倶楽部の部員にメッセージをいただけますでしょうか

グーグル先生にたずねてみると、「理学」は自然界の根本的な原理を探求していく学問、工学はそれを応用し、モノづくりや技術開発を行っていく学問とのことです。
私が携わっている材料開発は工学に分類されるのでしょうが、原理の解明から始めなければならないこともしばしばです。その意味で、理学だから役に立つことは教えられていないということは絶対にありませんし、積極的に外に出てみてほしいと思います。私の所属する研究所には立派な装置はたくさんあるのですが、それを使う研究者が不足しています。興味があれば、お気軽に声をかけてください。

最後にひとこと

学生時代には研究者の器ではないと思っていた私が、ひょんなことからつくばで研究者を続けています。
千に三つぐらいしか話がまとまらないので、土地・家屋の売買や貸金の斡旋業を千三つ屋と呼ぶそうですが、材料開発も同じようなもので、なぜ動かない、なぜ性能が上がらないと考え続ける毎日です。
それが楽しいと感じることができるのは、理学部での教えを受けたおかげかもしれません。

経歴

 

1986年

大阪大学大学院理学研究科 物理学専攻 博士前期課程修了

同年

松下電器産業 中央研究所

1991年

松下電池工業 技術研究所

同年

大阪市立大学より博士(工学)取得

1999年

無機材質研究所 特別研究員

2002年

物質・材料研究機構 主幹研究員

2018年

物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 拠点長

2023年

物質・材料研究拠点 フェロー

2023年10月04日 掲載