先輩を訪ねて

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現在はどのようなことをされていますでしょうか

阪大時代の研究を発展させ、内在性あるいは微生物由来の免疫調節性分子についての有機化学合成法の開発と、合成化合物を用いた自然免疫および獲得免疫の調節機能の解明と機能制御を目指した研究を行っています。免疫機構は複雑なシグナルの連携により調節されていますが、小さな分子構造の違いが大きな機能の変化を起こすことが多く、まだまだ未知なことが多く眠っていると感じながら日々の研究を進めています。

現在の活動(研究も含め)はどのようなきっかけで始められたのでしょうか

元々は企業の研究職でしたが、米国での研究生活を経て、帰国後阪大の出身研究室に戻った後、慶応大で研究室を立ち上げています。研究の面では、阪大時代から微生物由来の免疫調節性分子の研究を行っていましたが、最近、高等生物と微生物共通の骨格構造をもつ調節性因子が多く存在することを見出し、化学と免疫学の境界領域で解析を続けています。また、私たちが見出した活性分子をきっかけにした創薬研究も企業と共同で少しずつですが進めています。

大阪大学理学研究科時代に、心がけていたこと・大切にしていたことは何ですか

理学研究科には比較的若手の教員として在籍していたので、研究の場面では学生と近い目線で研究・実験に向き合うこと、研究対象の真理の探究を大事にして新しい発見を目指すこと、様々なことを経験し学ぶ機会は出来るだけ活かすこと、を心がけていたように思います。

大阪大学理学研究科・理学部時代に印象的なエピソードがあればお教えください

理学研究科の中で、専攻を超えた最先端研究における教育的な連携は貴重だったと思います。学生時代は、芝哲夫教授から楠本正一教授に、教員になった際は、楠本教授から深瀬浩一教授に代わられるタイミングで、新しい研究室がスタートする時期に在籍出来たことは幸運でした。 また、研究・教育面ではないですが、豊中キャンパスならではの満開の桜の下でのお花見も懐かしい思い出です。

これからの大阪大学理学研究科・理学部について、提言等ありましたらお教えください

日本の科学分野は予断を許さない状況が続いているようにも感じていますが、阪大 理学研究科・理学部には、これまでの素晴らしい伝統とともに日々の変革を続けて頂いて、日本の科学を牽引するコアの一つであり続けて頂ければと思っています。

今後やってみたいことはどのようなことでしょうか

現在は理工学部に所属し、理学系、工学系の教員が同じ組織にいるため、各々の考え方の違いを感じるとともに、情報系の専攻など以前は直接交流することの少なかった異分野の方が近くにいる利点も感じています。 今後、自身の研究の軸は大事にしつつ新しい視点をもった研究の広がりも考えて行ければと思っています。

理学友倶楽部の部員にメッセージをいただけますでしょうか

基礎科学を扱いさらに展開する“理学”分野は、大きな発見と変化に繋がる重要な分野だと思います。私自身は、“理学”分野の、自然界の真理の探求に価値を置く方の多い雰囲気が、昔も今も好きだと感じることが多いです。是非、繋がりの輪を広げていって頂ければと思います。

最後にひとこと

理学研究科・理学部と理学友倶楽部の益々のご発展をお祈りしています。

経歴

1989年

大阪大学理学部化学科 卒業

1989年

住友化学工業株式会社・研究員

1998年

Columbia University, Research Associate

2002年

博士(理学)学位取得(大阪大学)

2002年

名古屋大学大学院理学研究科・研究員

2003年

大阪大学大学院理学研究科・助手

2006年

大阪大学大学院理学研究科・講師

2008年

大阪大学大学院理学研究科・准教授

2014年〜現在

慶應義塾大学理工学部・教授

2023年11月1日 掲載