先輩を訪ねて

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現在はどのようなことをされていますでしょうか

大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC)と大塚製薬との包括連携で、免疫標的探索共同研究部門を担当させていただいています。ここではIFReCの先生方の研究成果を創薬に向けて推進していく”オープンイノベーション”を目指し、駐在する大塚製薬の仲間と共に研究を行なっています。

大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC)ホームページ

大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC)

IFReCのオフィスにて

現在の活動(研究も含め)はどのようなきっかけで始められたのでしょうか

生物学科時代に、当時、第1講座の教授であった柴岡弘郎先生のもとで“細胞”の面白さ、不思議さに惹かれ、医学系研究科修士課程進学後は、濱岡利之先生(当時教授)のもとで、最も進化した細胞ネットワークである“免疫”を学びました。大阪大学総長を務められた山村雄一先生のお弟子さんである平井嘉勝先生が所長をされていた大塚製薬の研究所へ就職した後は、免疫やその大本である“造血幹細胞”の研究、免疫を利用した抗腫瘍ワクチンの開発と、一貫して免疫・造血の分野を大学に寄り添って進んできました。それが現在の仕事につながっています。

大阪大学理学研究科・理学部時代に、心がけていたこと・大切にしていたことは何ですか

親・親戚共に教師が多かったので漠然と理科教師を目指していました。4年次で教育実習を経験した際に目的が見えなくなり、そのせいか大学院入試にも落ちてしまいました。1年余分に研究室で過ごさせていただく中で、もともと“自然の理(ことわり)”が好きだったことを思い出し、素直に、自由に、実験をすることで、研究の面白さ、“理学”の大切さを教えていただきました。それが自分の研究人生の「原点」になったと思います。

大阪大学理学研究科・理学部時代に印象的なエピソードがあればお教えください

研究室ではレクリエーションが盛んで、実験の待ち時間にはソフトボールをしたり、希望者でハイキング(登山?)などのアウトドアも楽しみました。ある時、長良川でのラフティング中に転覆し、あわや溺れそうになりましたが、幸い皆、救命胴衣を着けていたので難を逃れたことが印象に残っています。また、いつも仲の良い先輩方と4人で夜ご飯に行ったり、ドライブに行ったりしていましたが、その後それぞれで家族となっています。

柴岡研メンバーとハイキング
前列右端が柴岡先生、後列右端が十河氏

これからの大阪大学理学研究科・理学部について、提言等ありましたらお教えください

役に立つ学問が求められている時代ですが、だからこそ「理学」を追求してほしいと思います。大阪大学は伝統的に実学を重視し、産業界とのつながりも大切にしています。その実学の遥か先を進んでいく「理学」を追い求めていくことを大阪大学理学研究科・理学部にお願いしたいです。そして、その原点は柴岡先生の「キミ、見てみんか?」という好奇心にあると思いますのでよろしくお願いいたします。

今後やってみたいことはどのようなことでしょうか

共に柴岡研で研究時代を過ごした妻の希望でもあるのですが、理科のおもしろさ、自然の不思議さを子供たちと共有できるようなことも良いかなと思っています。「探究学習」という目的に向かって・・・というよりも、“なんだろう?どうしてだろう?”という素朴な気持ちを大切にしたいですね。

十河夫妻と柴岡先生
(柴岡先生の定年退職パーティーにて)

理学友倶楽部の部員にメッセージをいただけますでしょうか

大変な時代だと思います。生きていくためにも成果を出し続け、コンプライアンスを守り、PDCAやOODAを回せ!イノベーションだ、と、、、。それも大切ですが、一呼吸おいてアタマとココロを自由にさせて遊んでみるのも良いと思います。

最後にひとこと

ワクワク、ドキドキがいっぱいの大阪大学理学研究科・理学部がこれからも続いていくことを信じています。

経歴

1988年

大阪大学理学部生物学科 卒業

1990年

大阪大学医学系研究科医科学専攻 修士課程修了

1990-2010年

大塚製薬株式会社 研究員
(この間に所属した研究所:細胞工学研究所、分子医科学研究所、探索第一研究所、微生物研究所)

1996年

関西医科大学 研究生

2000年

博士(医学)(関西医科大学)

2010-2017年

大塚製薬株式会社 主任研究員
(この間に所属した研究所:微生物研究所、先端創薬研究所薬理研究部)

2013年

大阪大学医学系研究科 招へい准教授

2017-2020年

大塚製薬株式会社先端創薬研究所免疫研究部 部長

2018年

大阪大学医学系研究科 招へい教授

2020年-現在

大塚製薬株式会社研究管理部ディレクター 免疫担当
大阪大学免疫学フロンティア研究センター 免疫標的探索共同研究部門 招へい教授

2024年6月19日 掲載