理学友倶楽部だより

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2025.11.14

新任の教員よりごあいさつ:物理学専攻に着任した板橋 健太 教授

板橋 健太

Kenta Itahashi

大阪大学大学院理学研究科
物理学専攻
2025年7月 着任

現在の研究の概要について教えてください

中間子原子、あるいは中間子原子核と呼ばれる中間子と原子核が束縛した量子状態を研究しています。原子核を超高密度の“フェムトラボラトリー”(※1) として使って、様々な研究を行います。真空中では、カイラル対称性(物質が持つ右巻きのような性質と左巻きのような性質が対称であること)が破れていますが、原子核中では、不完全ですが回復しています。この現象を、中間子をプローブとして使って研究します。カイラル対称性は、物質の質量と関係しているはずなので、この研究を進めることで、もしかしたら質量がどのように生まれたのか分かるかもしれません。

※1 フェムトとは10-15を表す単位系の接頭辞

この道を選んだ理由を教えてください

物理が好きだからです。一つの事を理解するのに長い時間がかかりますが、分かった時の達成感は大きいです。子供の頃から、物の構造や、動作原理のようなものに惹かれていたらしく、家中の時計をバラバラにしていました(元に戻す事には興味がなかったようです)。高校に進むと、先生を囲んで学友と、高校物理の範囲を超える興味深い話題を議論するのが楽しく、大学でも物理を専攻したいと思うようになりました。

現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?

研究が形になるまでには、いくつもの工程があります。新しい実験を考えるところから、方法を議論、実験提案して、予算を獲得。実験装置を準備して、実験実施、データを解析して、論文執筆。レフェリー(学術誌において論文の査読者、ボランティアとして学術誌のレベルをキープするため貢献している専門家)と“闘って”、論文掲載。「自然」がどのような結果をもたらすのか、期待していた結果を得られたときの興奮と、うまくいかなかった時の失意と焦燥。様々な困難を乗り越え、論文が出版された時には、苦労が報われる気がします。

大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください

前職は理化学研究所(理研)・仁科加速器科学研究センターにおりました。実験は所属先の理研だけでなく、大強度陽子加速器施設(J-PARC)やドイツ重イオン研究所でも行ってきました。最近ではさらにジェファーソン米国立加速器研究所での研究も準備中です。

大阪大学理学研究科についての印象を教えてください

個性的な学生が多い気がします。

大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください

これまでの研究を継続しながらも新しい事にチャレンジしたいと思います。また、他分野の方々との交流も楽しみにしています。最先端の原子核・ハドロン物理学で使う加速器施設が大型化するなか、重要性を増す国際共同研究において、若い学生が飛躍する挑戦の場を多く創り出し、将来の発展への布石を打ちたいと思います。

理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします

色々教えてください。今後ともよろしくお願いします。

大阪大学 大学院理学研究科 物理学専攻 原子核実験研究室
→ホームページ

学歴

1998年3月

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 修了(博士(理学))

職歴

1998年

ドイツ重イオン研究所

1999年

東京工業大学 助手

2002年

理化学研究所 仁科加速器科学研究センター (専任)研究員

2007~2022年

東京工業大学 非常勤講師(兼務)

2025年

理化学研究所 仁科加速器科学研究センター 客員研究員

2025年

大阪大学大学院理学研究科 物理学専攻 教授