理学友倶楽部だより

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2020.06.26

新任の教員よりごあいさつ:物理学専攻に着任した工藤一貴教授

工藤 一貴

Kazutaka Kudo

大阪大学大学院理学研究科
物理学専攻
2020年4月 着任

現在の研究の概要について教えてください

専門は、新しい超伝導体の開発です。超伝導体は、臨界温度よりも低温に冷やすと電気抵抗がゼロになる驚異的な物質です。私は、高い臨界温度を持つ超伝導体の開発と、従来の理解を超える新奇な超伝導状態の探索を行っています。高臨界温度超伝導体の開発は、エネルギー問題を解決するためにとても重要です。新奇な超伝導状態の発見には、物性物理学の新しい分野を切り開く可能性があります。

この道を選んだ理由を教えてください

子供の頃、物を組み立てることと絵を描くことが大好きでした。今は、物質を合成したり結晶構造を描いたりして研究しています。好きなことは昔から変わっていないように思います。多分、明確に物理の道に進もうと決めたのは大学1年生の時です。私は、材料の設計と開発ができるようになりたかったので、工学部に入学しました。ところが1年生の最初に勉強した力学が非常に面白くて物理をもっと深く学びたくなり、2年生の時に応用物理学科へ進みました。そして今に至ります。

現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?

やりがいを感じるときはたくさんあります。例えば、新しい超伝導体を見つけたとき、新しい物質の結晶構造を決定できたとき、それらに携わった学生さんが喜んでいるときにやりがいを感じます。さらには、仮説通りに物質合成ができたときや、逆に予想外の物質が出現したときも、やりがいを感じます。難しさを感じるときは、ほぼ間違いなく、やりがいを感じるときの直前です。

大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください

東北大学金属材料研究所、岡山大学理学部、岡山大学異分野基礎科学研究所を経て、大阪大学に着任しました。東北大金研では学生さんの数が少なくて、個々に研究を進めることが多かったように思います。研究室のスタッフ数と学生さんの数が同じぐらいでした。岡大ではすっかり環境が変わって、たくさんの学生さんとグループで実験していました。大きく異なる環境で研究教育を行えたことは、私にとって貴重な経験になっています。

大阪大学理学研究科についての印象を教えてください

静粛な研究環境、熱意を持って研究と教育を行う教員と妥協せず課題に取り組む学生、親切で何ごとにもすぐ対応してくださる事務の皆様、という印象を受けました。

大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください

物事を広い視野で見て、科学的に考え、論理的に判断し、社会に貢献できる、博士の人材を育成したいと考えています。その教育を、超伝導体を中心とした物質開発の研究を通して行います。ありがたいことに、阪大の環境では、私の物質合成手法の幅が大きく広がります。学生さん、スタッフと協力して、物性物理学の新たなトレンドの端緒となるような新物質の発見を目指します。

理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします

学生さん、スタッフと協力して、超伝導体を中心とした物質開発の研究を大きく展開していくつもりです。どうぞよろしくお願いいたします。

最後にひとこと

私は東北生まれの東北育ちです。10年前に仙台から岡山に引っ越したときに、ようやく日本の広さを知りました。これから大阪の文化に触れるのを楽しみにしています。

大阪大学 大学院理学研究科 物理学専攻 量子物質開発グループ(工藤研究室)
→ホームページ

学歴

1998年

東北大学工学部応用物理学科 卒業

2000年

東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻 博士課程前期2年の課程 修了

2003年

東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻 博士課程後期3年の課程 修了 博士(工学)

職歴

2000年

日本学術振興会特別研究員 (DC1)

2003年

東北大学金属材料研究所 助手

2007年

同 助教

2010年

岡山大学大学院自然科学研究科 助教

2013年

同 准教授

2016年

岡山大学異分野基礎科学研究所 准教授

2020年

大阪大学大学院理学研究科 教授