理学友倶楽部だより

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2015.04.01

新任の教員よりごあいさつ:物理学専攻に着任した小林研介教授

小林 研介

KOBAYASHI, Kensuke

大阪大学大学院理学研究科
物理学専攻
2012年4月 着任

現在の研究の概要について教えてください

「メゾスコピック系の物理学」を研究しています。メゾスコピック系とは、ナノテクノロジーを利用して作られる、とても小さい(普通は1ミクロン、つまり1000分の1ミリメートルよりも小さい)電子回路のことです。そのような小さい回路では、電子を一個ずつ操作できたり、電子を干渉させたりできます。私は、特に、「ゆらぎ」を観測しながら量子力学的な現象を制御するという研究を行っています。

この道を選んだ理由を教えてください

小さい頃から動くものの「しくみ」や「しかけ」に興味があり、生命現象を理解したいと思って大学に入りました。入学後、DNAの構造の解明などで物理学が生命科学に果たしてきた様々な役割を知るようになり、まず物理学を学ぼうと思い、物理学科に進学しました。量子力学や統計力学などを勉強するうちに、物性物理学という分野に魅力を感じた結果、そちらの方に進んで今に至ります。物性物理学は、超伝導や磁石など、身の周りのものの「しくみ」や「しかけ」を解明する面白い学問なのです。

現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?

量子力学の発展の歴史を見るとよく分かるのですが、科学の発展には、「正確で精密な測定」と「自由な発想」の両方が不可欠です。研究をしていると、自分たちの測定によって世界の誰も見たことがないような素晴らしい結果が得られて、それをいろいろ考えることによって真理が明らかになっていく、そういう瞬間が訪れることがあります。その過程は、実験家にとって最も素晴らしい時だと感じます。

大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください

大学院では、光電子分光法という実験技術を使って、超伝導体や磁性体などの性質を研究していました。博士号を取得した後、東京大学物性研究所で、現在の「メゾスコピック系の物理学」の研究を開始しました。その後、スイス連邦工科大学に一年間滞在し、「ゆらぎ」の研究をスタートしました。さらに、京都大学の化学研究所に在籍した後、阪大に着任し、メゾスコピック系を使って量子力学的現象を制御する研究を続けています。

大阪大学理学研究科についての印象を教えてください

大阪大学理学研究科には、伝統的に学究を重んじる気風があると感じています。

大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください

大学に在籍する科学者の大きな使命の一つは、これまでに人類が培ってきた科学の体系を、発展的に次世代に継承していくことです。私にとってとても大切なことは、大阪大学や大阪大学大学院に入ってきた優秀なやる気のある学生たちが、社会の中で広い視点に立って次世代の科学・技術を担っていけるように、教育を行うことです。そのためにも、私たち自身が世界に誇れるような研究をしていくことが必要です。

理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします

発足して間もない理学友倶楽部ですが、皆さま、どうぞよろしくお願いします。皆さまにとって、大阪大学理学研究科が、一層の誇りと親しみを感じて頂ける場所になるよう、志を高くもって研究と教育を行っていきます。

大阪大学 大学院理学研究科 物理学専攻 小林研究室
→ホームページ

学歴

1994年3月

東京大学 理学部物理学科 卒業

1994年4月

東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 修士課程 入学

1996年3月

東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 修士課程 修了

1996年4月

東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 博士課程 入学

1998年4月

東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 博士課程 中退

1999年9月20日

東京大学博士(理学)取得

職歴

1996年4月〜1998年4月

日本学術振興会特別研究員(DC1)

1998年4月〜1999年8月

東京大学大学院 理学系研究科物理学専攻 助手

1999年8月〜2005年3月

東京大学 物性研究所 助手

2004年4月〜2005年3月

スイス連邦工科大学 物性研究室 研究員

2005年4月〜2012年3月

京都大学 化学研究所 材料機能化学研究系 助教授(2007.4.1 職名変更により准教授)

2012年4月〜

大阪大学大学院 理学研究科物理学専攻 教授(現職)