理学友倶楽部だより
News
2026.07.09
新任の教員よりごあいさつ:生物科学専攻に着任した松尾 芳隆 教授
松尾 芳隆
Yoshitaka Matsuo
大阪大学大学院理学研究科
生物科学専攻
2026年4月 着任
現在の研究の概要について教えてください
遺伝子発現の終着点である翻訳(※1)に着目し、「細胞がどのようにして正しいタンパク質を作り、その品質を維持しているのか」という生命現象の根幹に関わる仕組みを研究しています。特に、タンパク質合成を担う巨大分子複合体であるリボソームに着目し、その生合成、翻訳制御、品質管理機構を分子レベルで解明することを目指しています。
※1 DNAに保存された遺伝情報は、まずmRNAへ写し取られ(転写)、その後、mRNAに記された塩基配列の情報に基づいてアミノ酸がつなぎ合わされ、タンパク質が合成される。このmRNAの情報をもとにタンパク質を合成する過程を「翻訳(translation)」という。
この道を選んだ理由を教えてください
「なぜ運動神経には個人差があるのだろう」という子どもの頃からの素朴な疑問が、生命科学に興味を持つ原点でした。その答えの一つとして、DNAに刻まれた遺伝子の違いが関係しているのではないかと考えたことが、現在の研究へとつながっています。
分子生物学を学ぶにつれて、生物が進化の過程で獲得してきた精巧な遺伝子発現の仕組みに強く惹かれるようになりました。生命の複雑さや美しさを分子レベルで理解できること、そして誰も知らない新しい仕組みを発見できることに大きな魅力を感じ、研究者の道を志しました。
現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?
やりがいを感じるのは、誰も見たことのない新しい現象や分子メカニズムが見えてきた瞬間です。実験結果が予想と異なったとしても、それが新しい発見につながることがあり、そのような瞬間に研究の醍醐味を感じます。
また、研究室メンバーと議論を重ねながら、仮説を少しずつ形にしていく過程も大きな楽しみの一つです。
一方で、生命現象は非常に複雑で、一つの答えにたどり着くまでに長い時間を要することも少なくありません。思うような結果が得られないこともありますが、その試行錯誤の積み重ね自体が研究の本質であり、粘り強く向き合うことの重要性を日々実感しています。
大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください
2006年に奈良先端大学院大学で学位を取得し、その後、同大学院の研究員を経て、2008年よりドイツのハイデルベルクにあるハイデルベルク大学の生化学センターに留学しました。2013年末に帰国し、東北大学大学院薬学研究科で助教・講師を務め、2021年より東京大学医科学研究所の准教授、そして、2026年より大阪大学大学院理学研究科の教授として着任しました。
大阪大学理学研究科についての印象を教えてください
大阪大学理学研究科・理学部には、基礎科学を大切にしながらも、新しい学問領域の創出に積極的に取り組む自由で活気のある雰囲気を感じています。
学生の自主性を尊重する文化も強く、研究を通して大きく成長できる魅力的な環境だと感じています。
大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください
世界をリードする独創的な研究成果を発信するとともに、次世代を担う若手研究者や学生の育成に力を入れたいと考えています。
研究室では、単に知識や技術を習得するだけではなく、自ら問いを立て、自ら考え、挑戦できる人材を育てたいと思っています。
理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします
科学の面白さは、「まだ誰も答えを知らない問い」に挑戦できることにあります。
研究は決して一直線には進みませんが、失敗や遠回りの中にこそ新しい発見の種が隠れています。ぜひ、自分の好奇心を大切にして、未知の世界に積極的に飛び込んでください。
また、研究は一人で完結するものではなく、多くの人との議論や協力によって発展していきます。分野や立場を超えた交流を楽しみながら、一緒に新しい科学を創っていければと思います。
最後にひとこと
研究室を訪れた学生や共同研究者から、「議論しやすい研究室」「新しいことに挑戦しやすい研究室」と思ってもらえる環境づくりを大切にしたいと考えています。
好奇心と挑戦する気持ちを忘れずに、研究室メンバーとともに成長しながら、新しい生命科学の地平を切り拓いていきたいと思います。
大阪大学 大学院理学研究科 生物科学専攻 分子動態生化学研究室
学歴
2006年3月
奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 博士課程修了
職歴
2006年4月
奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 研究員
2008年4月
ドイツ ハイデルベルク大学 研究員
2013年11月
東北大学大学院薬学研究科 助教
2020年5月
同上 講師
2021年5月
東京大学医科学研究所 准教授
2026年4月
大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻 教授

