理学友倶楽部だより

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2024.05.20

新任の教員よりごあいさつ:生物科学専攻に着任した近藤 侑貴 教授

近藤 侑貴

Kondo Yuki

大阪大学大学院理学研究科
生物科学専攻
2024年1月 着任

現在の研究の概要について教えてください

私は環境適応に必要不可欠な維管束という器官に着目をして研究を進めています。維管束は、水や栄養分を運ぶ輸送管、植物体の支持、電気シグナル伝搬など多面的な機能を有していますが、これらは維管束の幹細胞から作られます。このような維管束を構成する多様な細胞の運命がどのように決められていくのか、独自に開発した組織培養技術VISUALを用いて明らかにしようとしています。

この道を選んだ理由を教えてください

中学生の頃に生物部に入部し、マウスを使った実験を始めました。この頃から色々な仮説を立ててそれを検証するという事の面白さに気付き始めました。大学では植物についてまだ分かっていないことがたくさんあるということに驚き、理学部生物学科の植物学コースに進学をしました。学部4年生、修士課程と研究にのめり込み、気付けば博士課程へと進学し研究者への道を目指すことになりました。

現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?

立てた仮説通りの研究結果が得られたときは達成感を感じますが、一方で想定外の結果が出た時の方が研究者としてなんとか理解してやろうとモチベーションが高まってきます。やりたいことが色々ありすぎて研究の優先順を決めるときには、興味を優先するか実現性をとるかで結構悩みます。

大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください

2013年に東京大学大学院理学系研究科で博士の学位を取得し、同大学院の研究員、そして助教として植物研究者としてのキャリアをスタートさせました。その後、2020年に神戸大学大学院理学研究科の独立准教授として研究室を主宰することになりました。2024年の1月に大阪大学大学院理学研究科の教授として着任をしました。

大阪大学理学研究科についての印象を教えてください

前職ではマクロ(生態系)の先生が多かったので、大阪大学にはミクロ(分子生物学)の先生が多いなという印象です。材料やアプローチは違えど、向かっている方向性は近いので一緒に議論を深めながら共同して教育や研究を進められそうです。

大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください

私はこれまでにユニークな組織培養系を確立したり、細胞運命の定量や可視化ができる変わった機器を作ってきました。大阪大学着任後は、新たに情報学や進化学の解析を取り入れることで全く新しい生物学を展開していきたいと考えています。また、最近取りざたされる持続可能な開発目標(SDGs)に向けて、これまでに開発してきた維管束の運命操作技術を活用できないかと色々と計画を練っているところです。

理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします

研究を進める上で教科書や論文から得られる知識も改めて大事だと感じることが多いですが、実際の現場においては知識よりも想像力が重要である場面も多々あります。日ごろから色々な可能性について想定しておくことは決して無駄にはならないと思います。

最後にひとこと

研究歴を重ねても常識に縛られない大胆な思考を維持し、誰もが考えもしなかったような「変な」研究を進めていきたいと思っています。

大阪大学 大学院理学研究科 生物科学専攻 植物細胞運命制御研究室
→ホームページ

略歴

2010年3月

東京大学大学院理学系研究科 博士前期課程修了

2010年4月

日本学術振興会 特別研究員

2013年3月

東京大学大学院理学系研究科 博士後期課程修了

2013年4月

東京大学大学院理学系研究科 特別研究員

2014年4月

東京大学大学院理学系研究科 助教

2020年3月

神戸大学大学院理学研究科 准教授

2024年1月

大阪大学大学院理学研究科 教授