理学友倶楽部だより

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2023.06.29

新任の教員よりごあいさつ:物理学専攻に着任した南條 創 教授

南條 創

Hajime Nanjo

大阪大学大学院理学研究科
物理学専攻
2023年4月 着任

現在の研究の概要について教えてください

暗黒物質の正体、質量の起源となるヒッグス粒子、物質ばかりで反物質のない宇宙など、素粒子物理の謎を解明すべく実験をしています。LHCの世界最高エネルギーの陽子陽子衝突によるATLAS実験で、ヒッグス粒子の性質解明や、新粒子探索をしています。2029年開始予定の高輝度LHCによるATLAS実験の準備も進めています。同時に、J-PARCの世界最大強度の陽子加速器によるKOTO実験で、K中間子の稀な崩壊を使って、より高いエネルギー領域の新しい物理を探索しています。稀なことは時間揺らぎが小さいことで、不確定性関係から大きなエネルギー揺らぎが許され、高エネルギー領域を探ることができます。この次世代実験KOTO II実験も計画中。

この道を選んだ理由を教えてください

中学の頃に読んだブルーバックスの“四次元の世界”がきっかけ。理論は難しすぎて、実感のある実験が好み。多体系より個々の粒子を対象とする素粒子寄り。大学院で受かった研究室が素粒子実験で、そのまま楽しくこの道に進みました。2001年に届いたつくば科学万博のポストカプセルによると、当時から研究者になりたかったらしい。

現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?

実験は初めてのことや挑戦的なことで、最初はうまく行かないことが多いですね。そんな自然からの挑戦に応えて、アイデアや努力で打ちまかし、自然の真理に一歩近づいたかもしれない、と思えることにやりがいを感じます。そんな自然との勝負なので、学生スタッフ関係なく、議論をし、一緒に実験をします。学生がぐんぐん成長して、あっと驚くようなことも出てきて、人間の力の凄さに感動できることも醍醐味です。

大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください

ATLAS実験の準備で修士論文、電子陽電子衝突データの解析で博士論文を書いた後、次は実験を作るところからやりたいと思っていました。京都大学の助教になり、米国で計画されていたK中間子の稀崩壊を探す実験を立ち上げることに。ところが着任1ヶ月後に、この米国の実験計画は議会で否決され、立ち消え。そこからJ-PARCでのKOTO実験に参加しました。実験提案から始まり、複数の検出器を設計して作り、実験をして解析と、まさに実験を作り、2013年に最初の物理成果を出すデータを取得しました。2016年から阪大でKOTO実験を継続しつつ、ATLAS実験を再開しています。

大阪大学理学研究科についての印象を教えてください

スタッフも学生もお互いに自由に発言をして、議論できます。素粒子原子核だけでなく、物性分野も近くて、交流しやすく、事務や秘書の皆さんからも研究をサポートしてもらえています。

大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください

前述の高輝度LHCでのATLAS実験、KOTO II実験を立ち上げ、素粒子物理学の謎に迫る、新しい物理を発見したいと思っています。その過程で多くの修士や博士の学生さんを育て、大阪大学理学研究科・理学部から、優秀な人材を送り出したい。これまでの居室の役割の半分は実験室でしたが、これからは人と人を結ぶ役割を増やしたい。研究室間の交流も進めていきたいと思っています。

理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします

どんどんチャレンジして、失敗もたくさんしましょう。

最後にひとこと

埼玉県出身です。小学生の頃はほとんど群馬県にいて、少年サッカーをしていました。みんなで遊ぶのが楽しかったです。中学、高校と水泳部で、“Swimming Faster”という本をよく読んでいました。今ではほとんどやれませんが、サッカーをしたり、泳ぐのは楽しいです。

大阪大学 大学院理学研究科 物理学専攻(南條研究室)
→ホームページ

学歴

1998年3月

東京大学理学部物理学科 卒業

2000年3月

東京大学理学研究科物理学専攻 修士課程修了

2005年5月

東京大学理学研究科物理学専攻 博士課程修了 博士(理学)


職歴

2005年6月

東京大学大学院理学研究科 研究支援員

2005年7月

高エネルギー加速器研究機構 ポスドク研究員

2005年8月

京都大学大学院理学研究科 助手→助教

2016年5月

大阪大学理学研究科 准教授

2023年4月

大阪大学理学研究科 教授