理学友倶楽部だより

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2022.09.07

新任の教員よりごあいさつ:化学専攻に着任した笠松 良崇 教授

笠松 良崇

Yoshitaka Kasamatsu

大阪大学大学院理学研究科
化学専攻
2022年7月 着任

現在の研究の概要について教えてください

放射性物質を扱った化学の研究分野にて研究を進めています。特に原子番号の大きな”重い”と表現される元素の基本的な化学的性質を調べています。原子内に働く相対論の効果が無視できなくなる重元素の性質は軽い元素とは異なった性質を示すことがあり、非常に興味深いです。また、軌道殻電子の構造や化学状態が原子核の壊変に影響を与えるような特殊な事象の研究を行っています。

この道を選んだ理由を教えてください

物心がついた頃からこの世界の成り立ちに強い興味がありました。そのため、その後高校生の時に化学を一番面白く感じ、化学の道に進みたいと思った時に、応用化学ではなく純粋化学の方向に進むことを希望しました。大学で研究を開始してからはとても面白く感じ、夢中になっていたらその道に進むことができていました。

現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?

生成率が低く、短寿命であり、またそのため1原子レベルでしか扱えない重元素の化学研究は非常に難しく、その性質はほとんど分かっていません。新しい手法の開発に成功し、苦労して調べたその性質が予想外であった時、また色々と考察していると興味深い推測に至ったときは非常に興奮します。

大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください

私は大阪大学の大学院理学研究科で博士の学位を取得後、日本原子力研究開発機構と理化学研究所に勤めておりました。これらの大規模加速器施設にて重元素の化学研究やニホニウムなどの超重元素の合成などについても従事してまいりました。その後、大阪大学の大学院理学研究科に助教として採用いただき、現在に至ります。

大阪大学理学研究科についての印象を教えてください

純粋に学術研究を目指す学生にとっての選択肢として、理学部を持つ大学というのは限られています。その中でも多くの研究室を有することで幅広い研究分野に対応し、また多くの貴重な研究機器やレーザーや加速器などの大型施設を持つ大阪大学は非常に重要で貴重な存在と思います。

大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください

大阪大学の放射化学講座は、すでに放射化学分野において全国的にも代表的な講座となっていると思っています。今後もより広く放射能などに興味のある学生さんにとっての良質な受け皿になれるように尽力し、また共に研究するメンバーとして呼びかけていくことで一大拠点としていきたいと思っております。

理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします

大阪大学の理学部はすでに世界的な研究拠点であります。そのいち講座を担うにあたって恥ずかしい存在にならないように尽力していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

最後にひとこと

放射能には特に社会的にはネガティブな面もあります。しかし周期表内の元素の約1/3は放射性であり、放射化学の学術的意義は決して小さくありません。原子核を対象とするような化学研究も放射化学の特徴といえます。また、そういった基礎研究の成果から社会的に大きな人類貢献に発展する可能性も大いにあると思います。

大阪大学 大学院理学研究科 化学専攻 放射化学研究室(笠松研究室)
→ホームページ

学歴

2000年

大阪大学理学部卒業

2002年

大阪大学大学院理学研究科博士前期課程修了

2006年

大阪大学大学院理学研究科博士後期課程修了

職歴

2006年

日本原子力研究開発機構 博士研究員

2009年

理化学研究所 リサーチアソシエイト

2010年

大阪大学大学院理学研究科 助教

2016年

大阪大学大学院理学研究科 講師

2021年

大阪大学大学院理学研究科 准教授

2022年

大阪大学大学院理学研究科 教授