理学友倶楽部だより
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2022.06.22
新任の教員よりごあいさつ:フォアフロント研究センターに着任した兼田(中島) 加珠子 教授
兼田(中島) 加珠子
Kazuko KANEDA-NAKASHIMA
大阪大学大学院理学研究科
附属フォアフロント研究センター
2022年4月 着任
現在の研究の概要について教えてください
短寿命アルファ線放出核種をがんに対する核医学治療に応用する研究をしています。核種の製造に核物理学、化合物への標識や生物への影響の検証に理学、治療効果の検証に医学と、候補化合物の製造と応用に向けて、「医理核連携」で検証を続けています。2022年には甲状腺がんに対する開発薬剤の医師主導治験が始まり、現在も多様ながん種に対する薬剤の開発を推進しています。
この道を選んだ理由を教えてください
幼い頃から、分野を問わず雑学を増やすことや物の観察が好きでした。そして教科書よりもずっと面白いことを本に書いている所謂「〜博士」という人たちに強い興味を持っていました。好きなことを講演やテレビで語る博士さんたちが心から楽しそうに見え、彼らの職業である研究職を魅力的に感じていました。好きなことを仕事にして、一生好きなことだけして生活していきたい!と興味の赴くまま進んできた結果、今に至ります。
現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?
研究が計画通りに順調に進んでいる時、そして自分の研究内容が世の中の役に立ちそうだと感じられる時にやっている研究にとてもやりがいを感じます。子供が仕事を頑張って理解しようとしてくれている時、そして励ましてくれる時にも改めて仕事のやりがいを感じます。一方で運動会などの子供のイベントが研究にかかるイベント(学会)と重なってしまう時に、優先順位がつけづらく研究と「お母さん業」との両立の難しさを感じます。
大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください
大阪大学大学院生命機能研究科では細胞内微量分子による免疫シグナルの研究、宮崎大学では白血病の分子標的医薬(核酸医薬・抗体医薬)の開発、病態発症のメカニズムの研究に従事していました。大阪大学大学院医学系研究科では主に膵がんを標的疾患とする分子標的医薬の開発や作用メカニズムの検証を行なっていました。大阪大学放射線科学基盤機構においては、短寿命アルファ線の高い細胞障害性と易標識性を利用して、核医学治療薬の開発を進めて、現在に至ります。
大阪大学理学研究科についての印象を教えてください
幅広い分野の研究を個々の研究者が深掘りしている学部であり研究科だという印象を持っています。実際に参画してみると、何をやってもOKとは言わないまでも、自由にそしてプライドを持って最先端の研究を切り開いていっている研究者が集まり、育ち、そして巣立っている場所でした。部局や大学、国を超えた様々な研究も企画、立案、推進されていて、いわば人と研究のるつぼのようなところであると感じています。
大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください
「己を知り、己を磨き、己を誇る」 己を誇ることなしに、他人を認め、成功を祝うことは出来ません。己を誇るために、己を磨き、前を向きたいです。己を磨くためには己を正しく知る必要があります。己があるのは、多くの人々のおかげであることを忘れず、常に感謝の気持ちと謙虚な気持ちを持ち、さらに磨いていきたいと思います。己を誇ることができても、再度己を知り、感謝の心と謙虚な気持ちを持ち、決して奢らないよう心がけたいです。
理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします
自分が興味を持てることは、どんどん突き詰めていきましょう!研究でも趣味でも没入できることがあるのは素晴らしいことです。仲間が居れば、より楽しくなるでしょう。
研究ならば専門と言って自分の枠を狭めずに、色々な研究者と交流していきましょう。ちょっとした交流が思わぬアイディアや素敵な共同研究につながることも多いです。中高時代の知人・友人や趣味のサークルの輪が、時を経て仕事で役に立つこともあります。意外なところで人の繋がりがあり、世の中の狭さに驚かされます。人との繋がりはとても大切ですね。
最後にひとこと
仕事がオンでもオフでも楽しく居ること。これが一番。研究は携わった時間が直接成果に結びつかないこともあります。夢見て行ない、考えて祈る。叶える努力をしなければ妄想。やらない後悔より、やった後悔の方がまし。「たられば」の人生はなく、自分は自分、人は人。ダラダラしたらあとで急げば良いし、間違ったらやりなおせばいい。ただ、その寄り道から何かを得ようとする努力は怠らないこと。人生万事塞翁が馬なのですから。
大阪大学 大学院理学研究科 附属フォアフロント研究センター 医理核連携教育研究プロジェクト
→ホームページ
略歴
2008年
大阪大学大学院生命機能研究科 特任研究員
2010年
宮崎大学医学部 助教
2014年
大阪大学大学院医学系研究科 特任助教
2017年
大阪大学大学院理学研究科 特任助教
2018年
大阪大学放射線科学基盤機構 特任准教授
2022年
大阪大学大学院理学研究科 教授