理学友倶楽部だより
News
2022.06.17
新任の教員よりごあいさつ:高分子科学専攻に着任した寺尾 憲 教授
寺尾 憲
Ken Terao
大阪大学大学院理学研究科
高分子科学専攻
2022年4月 着任
現在の研究の概要について教えてください
様々な形の高分子を合成し、溶液中における分子の形と、そこから派生するさまざまな特性を調べています。研究手法としては研究室や理学研究科にある様々な装置を利用するほか、SPring-8の小角X線散乱装置をよく利用しています。最近では、環状構造や多分岐構造などの特殊な構造を持つ高分子や、食品の増粘剤として利用され、温度変化によって解離、再性する多重らせん多糖の分子形態の時間変化について調べています。
この道を選んだ理由を教えてください
高校2年生までは当時人気のあった電子・情報系への進学を考えていましたが、化学の授業内容が面白く、また生命現象に重要であるにもかかわらず高校ではあまり取り扱われていない高分子を勉強できるということで高分子学科を志望しました。もともと座学よりも実験の方が好きだったこと、4年生になっていつでも研究室に来て実験してよい環境になったことから、研究者を目指すことを考えました。
現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?
研究構想段階で思い描いた結果が出るのもよいのですが、思いもよらぬデータが出て、その現象をうまく解明できた際には研究も進みますし、やりがいも感じます。逆に、高分子合成に手間取り、私たちが得意な計測に進めないときには、難しさを感じることもあります。
大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください
大阪大学で学位取得後、JSTの研究員として光学活性ポリシランの溶液中における分子の形、特にらせん構造に関する研究をしていました。その後、群馬大学工学部の助手として、コラーゲンや多糖誘導体などの天然高分子濃厚水溶液の量子ビームによる架橋、マイクロカプセルを用いた光学活性ポリシラン凝集体の光学特性に関する研究などを行い、2005年から大阪大学で働いています。
大阪大学理学研究科についての印象を教えてください
研究・教育のどちらにも熱心な先生が多いと思います。学生の印象として、実験が好き、または粘り強い方が多く、低学年の学生実験でも、授業時間を超えても最後までやり遂げようとしますし、納得のいかない実験結果に対して再実験の希望があるのは理学部の学生が多い印象があります。
大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください
豊中キャンパスは交通の便が非常に良いところにありますので、学内だけでなく、様々な学外施設も使って高分子の基礎研究を深めてゆきたいと考えています。高分子科学専攻は、全国の理学系の研究科で唯一”高分子”の名を冠した専攻であり、高分子の基礎を勉強したいならば、まずはここを候補に挙げる専攻にしたいと思います。
理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします
高分子のように、利用用途が多く、基礎研究よりも応用研究が活発な分野でこそ、あえて短期的な利益を目指さない基礎研究から重要な発見ができた例も多くあり、今後もそのような成果が出てくると信じています。
最後にひとこと
この2年間、これまでではあり得ないほど大阪近辺から離れなくなってしまいました。これからいろいろな制限が解除されると思いますので、海外をはじめ、実験を含む研究でいろいろな場所を訪れたいと思います。
大阪大学 大学院理学研究科 高分子科学専攻 高分子溶液学研究室(寺尾研究室)
→ホームページ
略歴
1994年
大阪大学 理学部 高分子学科 卒業
1999年
大阪大学 大学院理学研究科 高分子科学専攻 博士後期課程修了
1999年
JST-CREST研究員
2001年
群馬大学工学部助手(この間、テネシー大学に1年滞在)
2005年
大阪大学大学院理学研究科助手・助教(この間、シュライナーズこども病院に約3か月滞在)
2013年
同 講師
2016年
同 准教授
2022年
同 教授