理学友倶楽部だより

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2022.06.14

新任の教員よりごあいさつ:物理学専攻に着任した西岡 辰磨 教授

西岡 辰磨

Tatsuma Nishioka

大阪大学大学院理学研究科
物理学専攻
2022年4月 着任

現在の研究の概要について教えてください

弦理論と場の量子論の研究を行なっています。特に場の量子論の非摂動的な性質に興味を持っており、超弦理論、ホログラフィー原理、量子情報理論など様々な視点から場の量子論の新たな側面を明らかにすることを目指しています。またホログラフィー原理の具体例であるゲージ/重力対応の物性理論や宇宙論への応用、およびブラックホールの物理や量子重力理論の解明に向けた研究にも取り組んでいます。

この道を選んだ理由を教えてください

子供の頃、スターウォーズのオープニングで文字がずっと奥まで流れていくのを見て、宇宙はどのくらい広いのだろうと興味を持ちました。高校生の頃に南部陽一郎先生の著書「クォーク」を読んで、この宇宙の全てを記述する究極理論と期待される超弦理論の存在を知りました。当時は全く理解できませんでしたが、理論的な考察だけで自然を理解しようとする素粒子論のアプローチに感銘を受けました。物性、重力、量子情報など、理論物理学の様々なアイデアが入り交じる点も素粒子論の魅力と感じています。

現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?

数学的に理想化されたモデルを調べることで、複雑な物理現象の背後にある共通の構造を発見したときは、とても感動的です。一方、調べたい対象があったとき、問題を上手いモデルに落とし込むにはセンスが要求されます。研究ではいつも自分にしか出来ないテーマを見出すことに難しさとやりがいを感じます。

大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください

大学院では主にホログラフィー原理を用いたブラックホールの研究を行いました。卒業後はポスドクとしてアメリカのプリンストンという閑静な街で過ごし、場の量子論の量子情報的側面の研究に取り組みました。その後、東京大学大学院理学系研究科を経て、京都大学基礎物理学研究所へ移りました。基礎物理学研究所にはしばらく居ると思っていましたが、このたび阪大にご縁を頂き1年ほどで異動となりました。

大阪大学理学研究科についての印象を教えてください

初代総長で物理学者の長岡半太郎博士による「勿嘗糟粕」という独創性を重んじる意味の言葉が講義室に書かれているのがとても印象的です。この精神が今の理学研究科にも引き継がれていることが素晴らしいと思います。

大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください

大阪大学理学研究科・理学部の若く気概のある学生さんと一緒に型にとらわれない自由な発想の研究を行いたいです。自分の専門は「理論物理」だと言えるよう、素粒子論以外の方とも交流を深めていきたいと思ってます。また教員と学生の垣根を越えて何事にも切磋琢磨できる環境を実現していきたいと考えています。

理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします

これまで大学でずっと研究をしてきましたが、研究室運営に関わるのは大阪大学理学研究科が初めてです。教員としてまだまだ未熟ですが、微力ながら理学研究科の発展に貢献していきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

最後にひとこと

生まれは兵庫で大学・大学院は京都だったので、人生の大半を関西で過ごしていますが、大阪で働くのは初めてです。これから大阪の見所にどんどん触れていきたいと思っています。またボルダリングが趣味なので、興味ある方は声をかけて頂けると嬉しいです。

大阪大学 大学院理学研究科 物理学専攻 素粒子論研究室
→ホームページ

学歴

2005年3月

京都大学 理学部 卒業

2007年3月

京都大学大学院 理学研究科 物理学 · 宇宙物理学専攻 修士課程 修了

2010年3月

京都大学大学院 理学研究科 物理学 · 宇宙物理学専攻 博士後期課程 修了

2010年3月

博士 (理学) 取得

職歴

2007年4月

日本学術振興会特別研究員 (DC1)

2010年4月

日本学術振興会特別研究員 (PD) (東京大学大学院 理学系研究科)

2010年9月

プリンストン大学 物理学科 博士研究員

2013年9月

日本学術振興会海外特別研究員 (プリンストン高等研究所)

2014年9月

東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 助教

2021年1月

京都大学基礎物理学研究所 特定准教授

2022年4月

大阪大学大学院 理学研究科 物理学専攻 教授