理学友倶楽部だより
News
2021.06.07
新任の教員よりごあいさつ:化学専攻 に着任した赤井 恵 教授
赤井 恵
Megumi Akai-Kasaya
大阪大学大学院理学研究科
化学専攻
2021年1月 着任
現在の研究の概要について教えてください
専門としては表面科学を基礎としています。それにデバイス工学や回路工学、情報科学等の技術を組みあわせて新しい領域の研究を進めたいと思っています。表面における反応は様々な機能をもたらします。エネルギーや情報を交換することが可能であり、表面は科学的にも応用技術的にも非常に重要な舞台です。今後様々な固体表面やナノ素子内を利用して基礎的な反応機構の解明を進めると共に、新しい分子機能を積極的に見いだしていく計画です。分子反応のニューラルネットワーク応用やニューロモルフィック機能発現といった、新たな応用領域の開拓にも取り組んでいます。
この道を選んだ理由を教えてください
「研究という作業が好き」ということに尽きるかもしれません。他の人がやっていないこと、知らないところを見つけ出し、それを調べたり、新しいものを見つけ出して、他の人に知らせる。研究や学問には一貫した一種の様式美のようなものがあって、その美しさに魅せられたとも言えます。一方で、学問は社会と隔っているように若い頃は思っていたのですが、今は過去の学問も研究も全て社会と密接に関わっていることが直感的に感じられるようになりました。もともと文学や芸術も好きで、科学の中に哲学を感じるのが何より楽しいです。
現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?
生粋ではありませんがほぼ9割大阪人なので、自分の研究を「面白い」と言ってもらうことが一番嬉しいです。ただ、面白さだけを追求していると、何故か研究は面白くなくなっていきます。目標とするのは美しく、確かでありながら、さらに社会の役にたつ研究をすることですが、これがなかなか難しく悩ましいです。
大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください
着任前は北海道大学大学院 情報科学研究科情報エレクトロニクス部門におりました。その前は長年大阪大学工学研究科の精密科学・応用物理学専攻にいました。教員として理学部に在籍するのは初めてです。実はしばらくクロスアポイントメント制度によって北海道大学の情報科学にも所属します。化学と情報科学、これまであまり縁のなかったこの二つを結びつけるという研究目標を提案しているので、それを応援していただいていると感じています。
大阪大学理学研究科についての印象を教えてください
理学部は一つの"世界"のようです。建物の中を歩いているだけで、角を曲ると宇宙だったり、巨大な蛋白質の分子模型だったり、原子核だったり生物系図だったり、突然数学式だったりします。この世界感は他学部にはないですね。大変に懐しいです。昔は化学教室では酢酸のにおい、生物だと廊下に攪拌機、物理だとポンプの音や焼けるにおい、数学だと煙草の煙とか、そんなものまで廊下で感じられましたが、流石にそれは無くなってて安心したような残念なような。あ、でも研究室のドアにときどきあるジョークはさすが理学部という気がします。
大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください
学生の時には最も基礎的で単純なものをまず学びたいと思い、理学部の物理学科を選びました。その後いろんな世界を見てきたことで今は脳に関心があります。研究で神経細胞ニューロンの機能を分子の反応によって真似させようとしていますが、それらに取り組めば取り組むほど、我々の科学技術と脳の仕組みの違いが浮びあがってきます。科学も技術も哲学も我々の脳の中でうまれています。その科学が脳を創りうるのかどうか。創ることが出来ないのならそれは何故か。自分なりの答えを出したいと思っています。
理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします
理学部の先生にはデニム率が高い、という噂をずっと本気にしていました。観測統計を取ったわけではないですが、確かにそうかなとも思います。デニムはいて大股で歩く大柄な女性がいたら私かもしれません。気軽にお声かけください、とは言いません。声をかけずそっとしておいてあげてください。実は人見知りです。小動物のようにゆっくりと近づいていただけますとありがたいです。
最後にひとこと
最近空手の黒帯を取りました。その後でハーバード大学医学部のジョン・J・レイティ博士の著書『脳を鍛えるには運動しかない!』を読むと、私みたいなタイプは空手のような運動をすると頭が整えられて頭が良くなると書かれていて喜びました。確かにそんな気がするので真面目に続けています。道場では師範だけでなく、中高校生、大学生(本学の現役学生さん含む)の先輩黒帯に御指導いただいています。二段取得に向けて頑張ろうと思います。
大阪大学 大学院理学研究科 化学専攻 表面化学研究室
→ホームページ
学歴
1992年
岡山大学理学部物理学科 卒業
1994年
岡山大学大学院理学研究科修士課程 修了
1997年
大阪大学大学院理学研究科無機及び物理学専攻博士課程 修了
1997〜2004年
大阪大学工学研究科、 COE特別研究員、理化学研究所協力研究員、JST SORST 研究員、ICORP研究員 を経て、2005年JSTさきがけ「構造制御と機能」研究領域 研究員
2007年
大阪大学工学研究科精密科学・応用物理学専攻 助教
2015年
JSTさきがけ 「素材・デバイス・システム融合による革新的ナノエレクトロニクスの創成」研究員(兼任)
2019年
北海道大学 大学院情報科学研究院 情報エレクトロニクス部門 准教授
2020年
同 教授
2021年
大阪大学 大学院理学研究科 化学専攻 教授
クロスアポイントメント制度により北海道大学と兼任