理学友倶楽部だより

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2018.06.04

新任の教員よりごあいさつ:物理学専攻に着任した松野丈夫教授

松野 丈夫

Jobu Matsuno

大阪大学大学院理学研究科
物理学専攻
2018年4月 着任

現在の研究の概要について教えてください

「薄膜・界面の物理学」を研究しています。二つの物質の薄膜を積み重ねた境界を「界面」と呼び、単一の物質では実現できない豊かな物性の宝庫です。現代テクノロジーを支える半導体デバイスも、界面の機能に基づいています。設計しだいで物質の対称性・次元性をも制御できる界面はそれ自体が「新しい物質」であり、大きな可能性が広がるフロンティアとなっています。将来的な機能応用を視野に入れつつも、新しい物質・物性に対する基礎的な興味を重視した研究をしています。

この道を選んだ理由を教えてください

高校までは数学を得意にしており、化学や経済学にも興味を持っていました。大学で物理学の美しさに触れ、思わず物理学科に進学してしまった後は、現在の物性物理学に興味を持ち今に至ります。物理学の視点では、我々の身の周りにある「物質」の中にも「素粒子」や「宇宙」があるとみなすことができ、しかもそれを自らの手で自由に制御することができます。コンパクトな中にも面白さが全て詰まっている、物性物理学に惹かれています。

現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?

物性物理学は、新しい物質の発見によって大いに発展してきた学問です。新しい物質は時として一つの「宇宙」に相当する価値を持ちますので、物質合成に挑戦するときは「大きな宇宙が詰まっているに違いない」という期待が高まります(せっかく新物質ができてもそれほど面白くなかった、ということもありますが…)。自ら作った物質で新しい物理を切り開くことができるのは、研究者としてこれ以上ない喜びです。

大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください

大学院では、光電子分光法という実験技術を用いて、金属と絶縁体との間を移り変わる物質を調べていました。その間に自らの手で物質を作りたくなり、博士研究員となった産業技術総合研究所で、現在の「薄膜・界面の物理学」の研究を始め、理化学研究所に移ってからもそれを発展させてきました。大学とはご縁がなかったのですが、学生の皆さんと研究をしたいという強い希望から、この度大阪大学に参りました。

大阪大学理学研究科についての印象を教えてください

古き良き理学の精神を大事にするとともに、その現代的意義を問い直し次世代へとつなげていこうとする意欲を持った方々が多いと感じています。

大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください

研究所を離れて大学に来ましたので、やはり人を育てていくことが最も大きな目標です。大阪大学理学研究科の恵まれた環境で、意欲のある学生たちと世界レベルの研究を繰り広げたいです。その中で、狭い分野の専門家を作るのではなく、広い視野を持つ理学人材の育成を心掛けます。そのような人材が次世代の科学技術を支えていくことは、大阪大学だけでなく日本にとっても重要なことだと確信しています。

理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします

大阪大学理学研究科をより素晴らしい場所にできるよう精進してまいりますので、皆様のご支援をいただければ幸いです。

最後にひとこと

名前は「じょうぶ」と読みます。変わった名前ですのでご記憶にとどめていただければ幸いです。

大阪大学 大学院理学研究科 物理学専攻 界面物性グループ(松野研究室)
→ホームページ

学歴

1996年

東京大学理学部物理学科 卒業

2001年

東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 博士課程修了


職歴

2001年

産業技術総合研究所 博士研究員

2005年

理化学研究所 研究員

2008年

同 専任研究員

2018年

大阪大学大学院理学研究科物理学専攻 教授