理学友倶楽部だより
News
2017.02.27
新任の教員よりごあいさつ:生物科学専攻に着任した志賀向子教授
志賀 向子
Sakiko Shiga
大阪大学大学院理学研究科
生物科学専攻
2016年4月 着任
現在の研究の概要について教えてください
脳のしくみに興味を持っています。昆虫、特にハエやカメムシの脳を使って、時間を知るしくみについて研究しています。皆さんの体の中には時計があり、寝る、起きるなどの自律的な周期性を作り出しています。私は、この時計を使ってどうやって季節を読むかという研究をしています。季節という1年の時間を知るしくみ、光周性の研究です。また、体内の時計を使って脳が日数を数えるしくみについても探っています。
この道を選んだ理由を教えてください
高校3年生の生物の授業で、自分たちで自由に実験をさせてもらったことがきっかけで、研究のおもしろさに気づきました。大学に入って、動物生理学におおいに興味を持ち、大学院生時代は、実験三昧でした。進路に悩みながらも没頭しているうちに、機会に巡り合って研究者になりました。英語がすごく苦手だったのですが、これを克服しないと研究ができないことに気づき、大学院生の時に猛勉強しました。
現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?
昆虫は動物の中でも一番多様性に富んだ分類群です。私たちが想像もつかないような生理メカニズムや行動に触れた時、進化の過程で生まれた生命の工夫のすごさに感動します。脳の中にある神経細胞をきれいに染め上げた時もうれしい。その形は芸術的でとても美しい。難しいと感じるのは、短期間で解答の出そうにない研究を学生とどうやって進めるか。本当に結果が出るかどうかわからない長期研究に挑む際、その判断に難しさを感じると思います。
大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください
1993年に岡山大学自然科学研究科で学位を取得し、大阪市立大学の助手として動物生理学者としてのキャリアをスタートさせました。その後、大阪市立大学で23年間、動物の行動や生理を神経系のしくみから解き明かすことを目的に、多くの学生に支えられて研究を行ってきました。途中、学生時代にストックホルム大学で1年間、講師時代にアリゾナ大学で1年間研究を行い、2016年に大阪大学理学研究科に着任しました。
大阪大学理学研究科についての印象を教えてください
「理学部は頑張る人とそれを支える人から成っている」、というフレーズが好きです。
大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください
こちらでは、頑張る人とそれをサポートしてくれる体制が整っていることを実感しつつあります。これまでは無理だろうなと思っていた方法にもチャレンジし、一早く脳が時間を決めるしくみを明らかにしたい。キャンパスにはあまり人の手が入っていない森が残っています。キャンパス内の昆虫でおもしろい研究をしたいですね。学生と出会い、新しい発見を楽しみにしています。
理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします
学生・高校生へ:自分の好きなことがあるのなら、それを続ける努力をすること、そして、努力を楽しんでください。理学に関わらず「自分の考え」を大切にして前に向かって進んでください。
最後にひとこと
理学の醍醐味は、真理の探究です。真理というものは逃げないし、変化しない。誰がどんなアプローチをしても変わらない。そういうところに理学研究の絶対的な安定感とやりがいがあると思っています。
大阪大学 大学院理学研究科 生物科学専攻 志賀研究室
→ホームページ
学歴
1993年
岡山大学 自然科学研究科 生物資源科学 博士(理学)
職歴
1993年
大阪市立大学 助手
1998年
大阪市立大学 講師
2001年
大阪市立大学 助教授
2007年
大阪市立大学 准教授
2010年
大阪市立大学 教授
2016年4月より
現職