理学友倶楽部だより

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2015.04.01

新任の教員よりごあいさつ:物理学専攻に着任した橋本幸士教授

橋本幸士

HASHIMOTO, Koji

大阪大学大学院理学研究科
物理学専攻
2012年10月 着任

現在の研究の概要について教えてください

素粒子の統一理論、特に超弦理論について研究しています。
世の中を作る物質と力は、現時点では統一的なフレームワークでは記述されていません。特に、量子力学と重力は互いに矛盾しています。この矛盾を解決するのが、俗に超ひも理論と呼ばれている数理理論です。超ひも理論では、素粒子が全て小さなひもであると仮定します。この仮定のために、宇宙の空間次元が決まってしまったりなど、美しい結果が現れます。
近年では、素粒子をひもであると仮定せずとも、超弦理論から現れる様々な数理等式が、理論物理学に広く応用されています。例えば、超伝導をブラックホールで近似する、などです。このような理論物理学について研究しています。

この道を選んだ理由を教えてください

私は元々、数学とその美しさに興味を持っていました。物理の中でもっとも数学的な思考を使うのが、素粒子論です。この世が根源的には何から出来ているのか、という人間の基本的なクエスチョンを、数学の力を使って解明できるかもしれない、そう考えるとワクワクします。

現在の研究でやりがいを感じるのはどんなときですか?
逆に難しさを感じるのはどんなときですか?

高次元の幾何学や物理学を使い、全く異なると思われている現象がじつは同じものであると判明する時が、最も面白くやりがいを感じる時です。例えば、クォークの閉じ込めと乱流が関係していたり、高次元の仮想ブラックホールが強相関電子系であったり、など、まったく予想もしない物理学が互いに数式を通じて関係し合います。これが、物理と数理の醍醐味だと思います。
一方で、難しいのは、それらの数理的構造がいかに美しくても、実際の世界で起こっている現象には適用できない場合があることです。いかにエッセンスを現象から取り出すか、が難しくまた面白いところです。

大阪大学理学研究科に着任前はどちらで研究していましたか?
着任までの経緯なども教えてください

理化学研究所で「橋本数理物理学研究室」を主宰していました。数理的な構造の研究を中心として、超弦理論や素粒子論から、場の量子論、ハドロン物理学、原子核理論までを研究対象にしていました。

大阪大学理学研究科についての印象を教えてください

私の専門の素粒子論については、過去には湯川秀樹先生が所属していたことに始まり、内山龍雄先生や吉川圭二先生など著名な先生方が活躍されていた研究室で、日本の素粒子論の研究を支えて来た研究室であると言う印象でした。また、私の故郷大阪を引っ張っていく存在として強く印象を持っています。

大阪大学理学研究科で実現したいこと、目標などあれば教えてください

阪大は名だたる研究者が在籍し、また歴史のある研究科です。一方で、研究室や専攻同士の縦割りの構造が、他の大学と同様に強く残り、特に私の研究のような、様々な分野をまたぐ場合に障害になります。たくさんの人と交流し、また交流する機会を持つことで、自身の研究を発展させ、また、楽しい研究環境を作って、阪大の理学研究科の研究をもり立てていきたいと考えています。

理学友倶楽部の部員にメッセージをお願いします

阪大にはユニークな先生方が集っており、交流する機会があればぜひ交流させていただきたく思っています。学生の方には、先生方と話の出来る機会を増やそうと考えていますので、積極的に研究にタッチしてもらえればと思います。

最後にひとこと

理論物理学に限らず、様々な研究はタコツボにはまりがちです。私はいろんなことに興味を持つタイプですので、ぜひみなさんとディスカッションさせていただきたく思います。宜しくお願いします。

大阪大学 大学院理学研究科 素粒子論(橋本)グループ
→ホームページ

職歴

1995年

京都大学理学部卒業

2000年

理学博士(京都大学大学院理学研究科)

2001年

カリフォルニア大学サンタバーバラ校
理論物理学研究所研究員

2001年

東京大学助教

2007年

理化学研究所定年制研究員

2010年

理化学研究所准主任研究員
橋本数理物理学研究室主宰

2012年

大阪大学教授