宇宙地球科学教室の創設

宇宙地球科学教室の
創設

はじめに

 私は12年前に阪大を退官して、その後以前から依頼されていた、米国Washington DCにあるCarnegie Institution of Washington Geophysical Laboratoryに赴任し、7年間、その後中国高圧科学技術研究中心に移り、現在に至っています。この度大阪大学理学友倶楽部から宇宙地球科学教室の発足の経緯について、昔話や回想録をまとめて欲しいとの依頼があり、20年以上前のことで記憶が確かではありませんし、十分な資料が上海の研究所にありませんので、固辞いたしましたが、思い出すままに綴ってみました。多少誤りがあるかもわかりません。ご容赦いただきたく存じます。すでに他界された先生もおられ時の流れの早いのに驚かされます。

宇宙地球科学教室の創設

 大阪大学理学部の長い歴史に天文学科や地球科学科が存在しておりませんでしたが、教職課程の理科教育専攻する学生の必要から教養部に地学があり、惑星科学、地質学、地球物理学の授業が行われていました。平成6年に、多くの国立大学と同様に大阪大学の機構改革で、教養部が改組になりました。東京大学では教養学部として独立した学部を創設しましたが、大阪大学では色々議論がありましたが、多くの教官が関連学部に移動し教養部が消滅しました。地学関連につきましては、基礎工学部からの要望もありましたが、全地学教官はまとまって理学部に所属することになりました。初め理学部に宇宙地球科学科が発足しましたが、間もなく理学部学科を無くし大学院専攻科のみを存続させることとしました。学部教育は物理学科に所属し基礎的な物理を基本とした宇宙地球科学専攻となりました。この点他大学と大きな違いがあり、特色ある講座が発足しました。平成8年には大阪大学は大学院大学に移行し、また国立大学の独立行政法人化と歴史を進めて来ました。

創設期の体制と教授陣

 宇宙地球科学教室創設にあたり、都福仁(物性物理、磁性)、宮本重徳(天体物理、X線天文学)、池内了(宇宙論、宇宙進化学)、池谷元伺(量子地球物理学)、徳永史生(生体進化、極限生物学)、松田准一(隕石学、同位体地球化学)、山中高光(固体地球科学、地球内部物質学)、増田富士雄(地球史、地球環境学)、砂村継夫(堆積学、地形形成学)などを中心に9講座体制、10 人の教授によって宇宙地球科学専攻が発足しました。宇宙地球科学教室は時間(億年〜マイクロ秒)、および空間(量子〜宇宙空間)スケールは他学科にない、実に幅広い科学を理論と実験で対応する研究室が創設されました。これらの講座は横断的に有機的に関連を持ち、研究やセミナーなど相補的に運営をしていくことは、学生に取っても多岐にわたる知識教育を得られる組織となったと思っております。事実各講座で多くの後進を今までに世に輩出してきたことが、証明していると思います。私の講座では15名の博士取得者が現在、7名の教授、3名の准教授、またJ-PARC(大強度陽子加速器施設)、SPring-8(大型放射光施設)、PF(放射光科学研究施設)の研究施設で活躍しております。

宇宙地球科学教室の発展と現在

 阪大の価値ある科学的資産であり、旧教養部地学が保管、陳列の責任を持っていたマチカネワニ(現在標本館にレプリカが陳列されています)を教室のシンボルマークとして使用することにしました。また豊中キャンパスの正門に隣接して宇宙地球科学教室の独立した7階建ての建物が建設されました。その後玄関には古生物の化石や、鉱物の標本、壁面は中生代の海岸堆積砂紋(ripple mark)が施された、格調高い空間も設置されました。
 現在、各講座とも陣容が入れ替わり、研究対象も変わってきていることと思いますが、教室発足当初考えた、理念が継続されていることと思います。現在8講座体制が維持されており、教室の年次報告書から、現在の活躍ぶりが伺うことができます。最後になりますが、20年以上前と比較すると、法人化後の教官の異常なまでの多忙な様子には同情いたします。

参考ウェブサイト:
宇宙地球科学研究棟(理学F棟)の玄関ロビー展示などについてはこちら
宇宙地球科学専攻年次報告書はこちらからダウンロードできます

教室のシンボルマーク


宇宙地球科学研究棟
(理学F棟)玄関

筆記者 情報

中国高圧科学技術研究中心 招聘研究員

山中 高光

YAMANAKA Takamitsu

■経歴

1990

大阪大学・理学部・兼任担当教官

1994

大阪大学・理学部・教授

1996

大阪大学・大学院・理学研究科・教授

2006

退官

2006

大阪大学名誉教授

2007

Carnegie Institution of Washington Geophysical Lab.(米国)
Senior visiting research investigator

2013

同退職

2015

Center for High Pressure Science & Technology Advanced
Research (HPSTAR) 中国上海  Visiting Research Scientist
現在に至る
 

兼職

1995

文部省学術審議会専門委員(科学研究費分科会)

1996

文部省学術審議会専門委員(科学研究費分科会)

2000

文部省日本学術振興会(科学研究費委員会専門委員)

2001

文部省日本学術振興会(科学研究費委員会専門委員)

2002

文部省日本学術振興会(科学研究費委員会専門委員)

2003

文部省日本学術振興会(科学研究費委員会専門委員)

2005

文部省日本学術振興会(科学研究費委員会専門委員)
内閣府日本学術会議研究連絡委員会

1997−2006

鉱物学研究連絡委員会委員 第14期、第15期、第17期、19期

2004

委員長 第18期

2004

結晶学研究連絡委員会委員 第15期

2007

地球化学宇宙化学研究連絡会委員 第19期

2004

内角府日本学術会議会員(第4部会員) 第19期

2007

内角府日本学術会議特認連携会員 第20期

2011

内角府日本学術会議特認連携会員 第21期
 

国際学会委員経歴

1988−

ICDD-JCPDS Data Commission Regional Committee

1990−2008

Journal of Powder Diffraction Advisory Board

1994

PICXAM(環太平洋X線分析会議) 日本代表委員

1994−1998

国際鉱物学連合(IMA) Commission of Mineral Physics委員長

1995

アジア結晶学会 (AsCA Malaysia) プログラム委員長

1997−

Zeitshrift für Kristallographie 編集員

2002-2006

国際鉱物学連合(IMA) IMA Vice President

2002−

国際高圧力学会(AIRAPT) Nominate 委員会委員

2006

IMA-Kobe 2006 組織委員長

2006−2010

国際鉱物学連合(IMA) IMA President

2010−2012

国際鉱物学連合(IMA) IMA Post President
 

国内学会委員経歴

日本鉱物学会:庶務、会計、行事、渉外幹事、評議委員歴任
日本結晶学会:行事幹事、評議委員歴任
日本高圧力学会:会計幹事、評議委員歴任
日本鉱物学会長 (2000-2002)
2007年地球惑星関連連合学会(JpGU) 組織委員長

■受賞歴

1976

日本鉱物学会奨励賞

1998

日本鉱物学会賞

2000

アメリカ鉱物学会賞(MSA -Fellow)

2001

国際回折データセンター(ICDD)功労賞

2018年3月23日 掲載